「企業におけるAI活用:7つの先進企業から学ぶ教訓」から生成AI利活用を考える

ChatGPTが2022年の11月に登場してはや数年…

もはや企業経営における生成AI活用は「流行言葉」「バズワード」にとどまらず、経営の必須科目になりつつある、と言っても過言ではありません。

 

…とはいうものの、他社はどのような課題を生成AIで解決し、会社を強くすることに成功しているのでしょうか?

この記事では、OpenAIが公開した「企業におけるAI活用 – 7つの先進企業から学ぶ教訓 -」という資料を元に、企業がAIのメリットを最大限に引き出すための7つの教訓についてご紹介します。

 

※原文は英語ですが、参考までリンクを貼っておきます。

【参考】AI In The Enterprise -Lessons From Seven Frontier Companies-  ※外部リンク

 

また記事の後半では、弊社nonetが提供する生成AI活用支援サービスについてもご紹介しています。生成AIを活用して会社を強くしたい想いをお持ちの方は、ぜひ参考にしてみてください。

  • 企業における生成AI活用の事例を知る
  • 先進的なAI導入事例から学べる7つの教訓とは



教訓1. 評価から始めよう

最初の教訓は評価から始めることが重要だ、というものです。

言い換えるなら”何を成果とするか”を定義した上で、生成AIにどこまでの価値があるかを定性的・定量的に検証しよう、ということですね。

 

資料の中では、生成AIを使って金融アドバイザーの仕事の効率と顧客への提供価値を高めようとしたモルガン・スタンレーの事例が紹介されています。

「金融アドバイザーが情報に素早くアクセスし、反復的なタスクにかかる時間を削減できれば、クライアントにより多くの、より良い洞察を提供できるのでは?」という仮説を元に、翻訳や要約の精度、AIの回答と専門家の回答の一致度といった具体的な評価軸を設定し、評価を実施したとのこと。

 

結果的には金融アドバイザーの98%が日常的にAIを使いこなし、資料へのアクセス性は劇的に改善。生成AIを活用することで顧客と向き合う時間を大幅に増やす成果を上げました。

 

教訓2. AIを製品に組み込もう

次に、製品にAIを組み込むことで、ひとりひとりに合ったつながりを生み出そう、という教訓です。

生成AIを活用して単に社内の仕事を効率化するだけでなく、AIを製品やサービスそのものに取り入れることで、お客様との結びつきを深め、事業の価値を高めることを目指します。

 

資料の中では求人サイト「Indeed」の取組みが挙げられています。

具体的には「Invite to Apply」という機能において、候補者のこれまでの経歴や職務経験が、なぜその求人に適しているのかをAIが自然言語で説明する形で機能を実装。

これにより、応募数が20%増えただけでなく、質の高い応募が増え、採用に至る割合も13%向上するという成果をあげています。

 

※以前の記事では「効率化」のみならず「イノベーション」を起こすための考え方をご紹介しました。

【関連記事】中小企業の経営者こそ、AI活用でイノベーションの風を起こせ!

 

教訓3. 今すぐ始めて早期に投資しよう

次が、試行錯誤を見据えて早期に投資すべき、というもの。

実際に生成AIを触ってみたことがある方なら同意いただけると思いますが、試行錯誤を繰り返しながら洗練され、徐々にその効果が高まっていくものです。

そのため、早く着手すればするほど、組織はその積み重ねによる改善から、複利的に大きなメリットが得られます。

 

この教訓を実践している例として、決済プラットフォームのKlarna社(クラーナ社、日本ではあまり馴染みのない名前ですね)の取り組みが紹介されています。

Klarnaは顧客対応チャットサービスに新しいAIアシスタントを導入し、導入からわずか数ヶ月で

  • 顧客チャット応対全体の2/3をAIが処理 ※オペレーター数百人規模の仕事量
  • 問合せ平均解決時間は11分⇒2分へ短縮
  • 従業員の90%が現在、日常業務でAIを活用
  • 顧客満足度は人間のサポートとほぼ変わらず

という成果を挙げたとのこと。

やはり「早期のAI導入」⇒「継続的なテスト」⇒「改善」という流れをとっています。早期に投資を行い、社内での幅広いAI導入を奨励することで、AIによる利益を享受することができた、という事例でした。

 



教訓4. モデルをカスタマイズしよう

次にAIモデルを自社に合わせてカスタマイズすることの重要性が教訓として挙げられています。

 

最近の汎用的なAIモデルはとても優秀ですが、そのままでは業界や自社特有の課題に完璧にマッチすることは稀でしょう。

そこでAIモデルをカスタマイズすることで課題の解決につながります。

会社独自データをベースにAIをカスタマイズすることで、①より的確な結果(精度向上)、②業界特有の知識理解(専門性深化)、③自社らしい表現の統一、④作業の手間削減(効率化)といったメリットを得ることができます。

 

実際に資料の中で挙げられているのが、住宅リフォーム大手Lowe’sの事例です。

Lowe’sでは、不正確な商品データによりネット通販の検索機能を改善すべく、AIを自社の商品情報で細かく調整(ファインチューニング)を実施しました。

結果として、商品の分類(タグ付け)の精度は20%向上、情報の間違いを発見する確率も60%アップするなどの成果を上げています。

 

教訓5. 業務の専門家にAIツールを渡そう

次が、自社に所属する業務の専門家の手にAIを委ねよう、という教訓です。

現場の業務プロセスや課題を最も深く理解している専門家(=現場部門で働く従業員)こそが、最もAIを効果的に活用し、改善を生み出すことのできる方々だ、という考え方ですね。

 

資料の中では、スペインに本社を置くビルバオ・ビスカヤ・アルヘンタリア銀行が「AIを専門家の手に委ねる」という教訓を実践し、顕著な成果を上げた事例として紹介されています。

法務部・コンプライアンス部・ITセキュリティチームからなる体制を構築した上で、全社的に生成AIツールの導入を決定し、ボトムアップ型での活用を推進したとのこと。結果として、5ヶ月程度で2,900以上のオリジナルチャットボットが作成されました。

具体的には信用リスクチームが信用度判断を迅速化・高精度化したり、法務チームが年間4万件の問い合わせ対応にAIを活用したり、カスタマーサービスチームがNPS調査の感情分析を自動化したり…

まさに多岐にわたる部門で効果を発揮しており、さらにマーケティングやリスク管理、オペレーション部門でも拡大が広がっているとのことです。

 

また最近ではGoogleのGeminiに数百のオンラインソースからレポートを作成する「DeepResearch」という機能が搭載されましたが、これも調査業務を効率化するのに一役買いそうです。

 

【関連記事】AI活用に強い組織づくりは”Gemini for Google Workspace”から始めよう

【関連記事】小さな会社の生成AI活用:便利さの裏に潜むセキュリティリスク

 

教訓6. 開発者の障壁を取り除こう

次はAIを活用して開発者の障壁を取り除き、ソフトウェア開発ライフサイクル全体を効率化すべき、という教訓です。

多くの組織において、開発者リソースの不足がボトルネックとなり企業の成長にフタをされた状態になっています。

AIをソフトウェア開発プロセスに組み込むことで、開発者はより迅速に、かつ高品質なアプリケーションを構築できるようになれば、リソース不足という課題を解消できる、という考え方ですね。

 

資料の中ではフィンテック企業:Mercado Libre(メルカド・リブレ)の取り組み事例が紹介されています。

同社ではLLM、Pythonノード、APIを統合した開発プラットフォーム「Verdi」を構築。

この開発環境は自然言語を中心的なインターフェースとし、セキュリティやルーティングロジックを組み込むことで、開発者がソースコードに深く立ち入ることなく、高品質なAIアプリケーションを開発できる環境を実現しました。

 

教訓7. 大胆にも思える自動化目標を設定しよう

現状の非効率なプロセスを許容せず、反復的な定型業務に対してAIを活用した「大胆な自動化目標」を積極的に設定し追求すること。

これが資料の最後:7つ目に挙げられている教訓です。

 

実際に俯瞰で私たちの仕事を眺めてみると、自動化に適した多くの反復的で定型的な作業が含まれています。 ※そんな時間を捻出できるか?という問題はありますが。

“大胆に思える自動化目標”で定型業務の効率化を推し進め、真に価値のある仕事にリソースを戦略的に再配分するのが狙いです。

 

この教訓の実践例として、OpenAI自身の業務自動化への取り組みが挙げられています。

OpenAIのサポートチームでは、システムへのアクセス、顧客への応答作成、関連アクションの実行といった定型作業に多くの時間を費やしていたそうです。

この課題を解決するため、OpenAIは既存のワークフロー上で機能する自動化プラットフォームを構築。初期ユースケースとしてGmail上での顧客応答作成やアクション実行を自動化したとのこと。

結果としてサポートチームは顧客データや過去の対応記事に即座にアクセスし、応答メール作成やアカウント更新、サポートチケット発行といった作業を効率化に成功しました。



生成AI活用に成功した企業の共通点とは?

重ねてになりますが、生成AIはかつてないスピードで進化し続けており、実験的な考え方と反復的なアプローチを通して変化を乗りこなすような営みこそが重要なカギを握っています。

ご紹介した生成AI活用に成功した企業(=OpenAIの資料で紹介されている先進的な企業)には、厳格な評価と安全性を重視しつつ、高いリターンが見込める業務領域から検証を開始し、反復を通じて学びを深め、それを組織全体に広げていくアプローチを取っている、という点に共通点があるようです。

 

…とはいえ現実問題、私たちのような小さな会社では今抱えている業務で手一杯で、自社だけで生成AI活用を推し進めるのは難しそう…と感じる方も多いのではないでしょうか?

そういった場合、外部専門家の手を借りるのもひとつの方法です。

 

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