拡販部隊・営業チームを組織する上で失敗しがちな3つのポイント
当サイトの「コミュニケーション」カテゴリでは、顧客の新規開拓や関係強化といった「マーケティング・セールス」の考え方を中心にご紹介しています。
さて、実は最近「セールスチームの立上げ」や「新商品・サービスの拡販」に関わる方からご相談を受ける機会があり、「セールス部隊の立上げ」に役立つポイントについてお話しをさせて頂きました。
今回の記事では、その中でもご好評頂いた内容をピックアップして共有できればと思っています。
※特に「セールス部門の立上げを検討する経営者」「営業部門の責任者」の方には参考にして頂ける内容だと思います。
似たようなお悩みをお持ちの方は、ぜひ参考にしてみてください。
- 3つのポイントを通して営業現場の「理想と現実」に目を向ける
- 個々人のセンスや能力に依存しないチームづくりを知る
- 「気合いと根性」に頼らない営業手法を考える
営業部隊の立ち上げーその”理想と現実”
経営者が抱える優先順位の高い課題のひとつに、「強い営業部隊(=拡販チーム)を組織する」というものがあります。
この記事では そのための方法について。具体的には「不確定要素の大きい”ハイパフォーマーの採用”を前提としたチームビルディング」ではなく、現実的なマネジメントの視点でチーム全体を底上げする、という視点で「強いセールス部隊を組織する方法」を考えて行きます。
比較的採用がうまくいっている企業では、転職サイト・エージェントの活用はもちろん、経営陣の個人的な繋がりを中心としたリファラル採用(従業員からの推薦採用)を上手に組み合わせていました。
新しい営業チームが失敗しがちな3つのポイント
まずはセールス部隊の立ち上げ段階で経験しがちな「3つの課題」についてみていきましょう。
詳細は伏せていますが、いずれも筆者自身が実際に経験したり、クライアント企業から相談を受けた内容をベースとしたものです。
マーケティングの全体像を理解できていない
おそらく、スタート直後のチームが最初に直面するのは「マーケティングの全体像を理解できていない」という課題でしょう。
たとえば「初対面の担当者との関係性もままならない状態で、覚えたての自社商品のメリットを小一時間説明し続ける」みたいな状況をイメージしてみてください。
・・・もしこれがシンプルに「新人営業マンの失敗」であれば、数年後のお酒の席で笑える話にもなるでしょう。しかし営業部門の責任者をはじめチーム全体がこのような活動を行なっているようでは、もはや目も当てられません。
われわれ消費者が新サービスや商品の存在を知ってから「購入」に至るまでのプロセス(=購買行動)は、AIDMA(アイドマ)やAISAS(アイサス)といった形でモデル化して考えることができます。
セールスに知見のない方が大雑把に全体像を理解する上では、大きな助けとなるフレームワークです。
“営業プロセスごとの問題点”を把握できていない
次に、営業プロセスごとの問題点がブラックボックス化している点を挙げておきましょう。
営業チームの成果は、そのまま会社の収入とほぼ同じ意味を持っており、他の部署と比較しても”結果”が強く求められています。
そのため、程度の差はあったとしてもほぼ全ての企業で目標やノルマが設定されている(マネジメントの対象となっている)のではないでしょうか。
しかし、単に営業マンの「売上額」「受注件数」だけをマネジメントするだけで、望むような結果を得られていないケースもあるかもしれません。
こういった状況を見たマネージャーの中には「売上げが上がらないのは頑張りが足りないからだ!」と、営業マン一人一人の「訪問件数」を指標に盛り込むケースもあるようですが、これも賢いマネジメントとは言えません。
それはなぜかー?
個人的に仲の良いお客様のところで、お茶でも飲みながら雑談するだけでも「訪問件数:1ゲット」になるからです。
記事の後半では、この問題に対するアプローチについても掘り下げています。
頑張ってくれているけど”売上げ”に繋がらない
チームメンバーの頑張りは見えるものの、思うような”結果”が現れない原因のひとつに「適切でないリソース配分」が挙げられます。
これからご紹介するのは、とある企業の新サービス拡販プロジェクトに携わっていた時の筆者自身の経験です。
システムインテグレーションを生業とするA社では、新たな事業ドメインの育成を目指し、新技術をベースとしたサービスを展開することになった。
新サービスは他社と比較すると金銭的・時間的コストが大きいものの、より大きな効果を顧客へ提供できる品質を持っており、同業他社および市場からは好意的な評価を獲得することに成功した。
サービス提供開始から一年後、追跡調査を行ったところ、企画部・営業部の努力により商談の数は著しい増加を見せていた。しかし肝心の受注額は商談数に比例せず低調な結果で、A社が当初期待していたほどの成果は得られなかった。
改善を図るべく現場の状況に目を向けると、営業部からの依頼で「商談のクロージング」と「サービスの導入」を担うデリバリー部隊に稼働に大きな負担がかかっており、サービス開始当初の品質を維持することが出来ていないことがわかった。
さて、この事例から学べることは何でしょうか?
実際にボトルネックとなっていたのは、受注後に案件を推進するチーム(デリバリー部隊)のリソースが不十分だったという点でした。
もちろん企画部・営業部の想い・熱量は理解できますし、彼らのミッションは「案件数」を増やすことにあります。
しかし実際には案件数とは名ばかりで、受注見込みのない商談が増えていった結果、推進チームは十分な稼働の確保が難しくなり「対応時間/案件」が減ることになったのでした。
これによって十分なサービスレベルを担保できず、慢性的に信頼を損ないかねない状態に陥っていたのです。
経営者の役割は「仕組み」を実装すること
ここで挙げた”リアル”な3つの課題は、実はそれぞれ「営業プロセス」「KPIマネジメント」「リソース」の最適化によってリスクを最小限に抑えることができます。
ひとことでお伝えするなら、キーワードは「仕組み化・組織化」です。
次のセクションで、具体的な考え方を掘り下げて考えていきましょう。
失敗回避のための3ステップ
- マーケティングファネルを基に業務設計
- KPIマネジメントで問題点を把握
- 活動リソースの最適化
という3ステップで失敗のリスクを最小化することができます。さっそくみてみましょう。
マーケティングファネルを基にした業務設計
全体像を掴むために、自社の営業プロセスを「マーケティングファネル」に沿って設計することをオススメします。
これに取り組むことによって「KPIマネジメント」や「リソースの最適化」を行うための基盤を整備することに繋がるからです。
また、この方法には「目標管理のしやすさ」「売上予測の精度向上」「チーム全体の得意・不得意を把握できる」などなど。。。非常に多くのメリットがあり、中長期的な視点でみても継続的にチームを強くすることになります。
もちろんファネルに沿った業務設計は決して簡単なことではありません。本気でセールスチームの仕組み化に取り組むうえで、ぜひとも取り入れて頂きたい考え方のひとつだと考えています。
■【関連記事】「足で稼げ!」は時代遅れ?営業プロセスを科学する”ファネル分析”
フェーズごとに明確な指標を定義
営業プロセスごとの問題点を把握するために、各営業フェーズごとに明確な指標を定義すること(KPIマネジメント)からスタートするのをオススメします。
具体的にはファネルの考え方に沿って営業プロセスをフェーズ分け出来たら、フェーズアップの条件を明確な指標と合わせて定義します。
例)「認知」から「関係醸成」へのフェーズアップ条件として「担当者個人と面談機会のセッティング」など。。。
これによって「進行中の案件がどのフェーズで足踏みしているか?」「フェーズ1から2に移行する割合が少ないぞ。」といった正しい状況の把握に繋がり、「明確な指標」を提示したことでチームメンバーが「次のアクション」に悩んでしまう場面を格段に減らし、チームの能力を底上げすることができます。
行動だけで達成可能な「訪問件数」だけでなく、頭を使っての営業努力が必要な「フェーズアップした件数」も併せてマネジメントすることになり、記事前半でご紹介したような事例を回避できるかと思います。
受注に近いフェーズから順にリソースを投下
メンバーの頑張りが結果に直結していないのであれば「リソースの最適化」を図ることが重要なカギを握ります。
「営業プロセスの設計」「フェーズ毎の指標定義」を完了できたことで、月日が経過するほどにパフォーマンスの傾向が見えてきます。
具体的には「問い合わせは増えているけど、実際の商談にはつながってないな」であったり「商談の場を設けられたら高い確率で受注しているな」といった傾向です。
記事の前半でご紹介した失敗例からも分かるように、営業活動の一番の目的は「売上=受注確定」です。つまり「案件数・商談数」を増やす、というのはその目的を達成するための前段階の一つにすぎません。
マネジメントレイヤーの方はこのことを念頭に置き、リソースを最適化することに努めることになります。
まとめ:
今回は「セールスチームの立上げ方」をテーマに、失敗しがちな3つのポイント。そしてさらにそれぞれの対策案についてご紹介しました。
少しでも参考にして頂けたでしょうか?
セールスやマーケティングは、その活動量が増えていくほどデータ・ノウハウが蓄積されることになり、より精度の高い行動を取れるようになります。
これは個人レベルでも会社レベルでも同じことが言えるのではないでしょうか。
そのため中長期的な視点で結果を最大化する方法として、Seeds4Bizではスタート間もないチームであっても顧客管理や営業支援システムを検討いただくことをオススメしています。
理想をいうなら、メンバーの頑張りによって生まれたノウハウが「ひとりひとりの頭の中」ではなく、「会社全体で共有できるシステム」に蓄積され、常にブラッシュアップされ続けている状態です。
今回の内容が「参考になった」「興味が持てた」という方は、ぜひ他の記事からも興味のある情報を探してみてください。
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