BMCキャンバスとは?|ビジネスモデルを記述 / 分析 / デザインするフレームワーク
当サイトSeeds4Bizでは “ビジネスのタネ”、つまり「新規事業を検討するヒント」 に繋がる情報について発信しています。
これを読んで頂いている方の中にも
- “起業・資金調達” を検討中
- 事業開発部で “新たな事業ドメイン” を検討している
- 採用や会社説明の場で、自社の “ビジネスモデルをわかりやすく伝えたい”
- 世の中にない”新しいサービス”を考えてみたい
といった想いをお持ちの方がいらっしゃるのではないでしょうか?
そこで今回はビジネスモデルの「記述 / 分析 / デザイン」に最適なフレームワークについて、構成する9つの要素とともに解説します。
似たような想いをお持ちの方が、当記事を通して「みらいを豊かにするアイディア」をカタチにする一助となれば嬉しく思います。ぜひ参考にしてください。
- ビジネスモデルを記述・分析・デザインするBMCを知る
- BMC活用のメリットがわかる
- 9つのBMCの要素・関係性を理解できる
ビジネスモデルを「記述・分析・デザイン」する
まず最初に、ビジネスモデルとは何でしょうか?
きっとSeeds4Biz読者のみなさまにとっては「釈迦に説法」かと思いますので、このあたりの細かな説明はほかの書籍等に譲っておきましょう。
この記事ではシンプルに「収益構造≒つまり売上げを上げる仕組み」として話を進めていきます。
ビジネスモデルをどのように表現するか?
もしあなたの組織が「新たな商品・サービス開発し、マネタイズ(収益化)までを実現する」というミッションをお持ちなら、ビジネスモデルをデザインする指針(ガイドライン)の有無が結果を大きく左右することになります。
また、事業の拡大を目指して新たにチームを構成したり、 資金調達を目指そうとする時には「網羅された形」でかつ「わかりやすく」ビジネスモデルを表現し、採用希望者や投資家に伝えるスキルが求められます。
自社のサービス・商品を差別化したい。もしくは既存事業におけるサプライチェーン改善を検討したい。と言った場合はいかがでしょうか?
こういった様々な状況で「アウトプットの品質」を保ちながら「いち早く・わかりやすく表現する」ための賢い選択は、「ひな型」となるフレームワークを活用することです。
※Seeds4bizでは、フレームワークの活用により仕事・思考のスピードを早めることを推奨しています。
ビジネスモデルキャンバス(BMC)のメリット
今回ご紹介するビジネスモデルキャンバス(以降:BMCと記載)は 収益構造を可視化するのに最適なフレームワークです。(右画像クリックで拡大)
BMCでは「提供価値」「顧客」「収益の流れ」「コスト構造」など、ビジネスモデルを構成する上で検討すべき9つの要素が定義されています。
そして各々の関係性を視覚的・直感的に把握できるのが大きな特徴です。
得られるメリットをまとめると
- “見える化”(=共通言語化)することができる
- 設計から”抜け漏れ”をなくす
- “思考の速度”が上がる
- “アウトプットの品質”がブレにくい
といったものがあります。
まさにビジネスモデルを「記述」「分析」および「デザイン」できるツールと言っても過言ではないと思います。
ビジネスモデルキャンバス(BMC)の構成要素
上でお伝えした通り、BMCを提唱・解説した書籍である「ビジネスモデル・ジェネレーション」の中では“ビジネスモデルを構成する 9つの要素”が次のように定義されています。
- 価値提案:Value Propositions
- 顧客:Customer Segments
- チャネル:Channels
- 顧客との関係:Customer Relationships
- 収益の流れ:Revenue Streams
- キーリソース:Key Resources
- 主要活動:Key Activities
- キーパートナー:Key Partners
- コスト構造:Cost Structure
ざっと挙げましたが。。。正直、我々の普段の生活では聞き慣れない単語もあるかもしれませんね。
このセクションにて、具体例を交えながら解説していきます。
Value Proposition(提供価値)
まず、ビジネスモデルを考える上で最も重要な要素である「提供価値」について。
先にご紹介した書籍のなかでは提供価値を「事業者(企業)が顧客(お客様)に提供するベネフィット(メリット)のすべて」と定義されています。
具体的には「定量的・定性的な価値」に分けることで理解が深まります。
「定量的」な価値とは、価格や提供スピード・SLAといった、数字で測ることができるものを指しており、「定性的」な価値とは、デザインや顧客体験(ユーザエクスペリエンス)といった、数値では測りにくいもののことを言います。
みなさまは「レビットのドリルの穴理論」をご存知でしょうか?
一言でいうと「ホームセンターにドリルを買いにきた人が本当に欲しいモノは、実はドリルではなく”穴”である」という考え方ですが、この理論からは「顧客の本質的なニーズを捕まえられているか?」という教訓を得ることができます。
一般的に世の中の多くの人(筆者含む)は、具体的な製品やサービスから「価値提供」を発想してしまいがちです。
しかし最も大切なのは、顧客が「何に困っているか?」「何を提供されると嬉しいのか?」を考え抜けるかどうか、に左右されます。
きっと、その解決策こそが「提供価値」の本質と言えるのではないでしょうか
Customer Segments(顧客)
Customer Segmentsでは、ビジネスモデルにおける顧客を定義します。
ご存知の通り、顧客なしにビジネスが成り立つことはあり得ません。そのため、どのような属性を持つ顧客にリーチするか?という視点は「価値提供」と同じくらい重要な意味を持っています。
具体的には”マトリクス図”をもとに定義することをオススメしたいと思います。2つの軸をもとに顧客層を設定することによって、自社の強みや他社の優位性などを客観的に把握することにも繋げることができるからです。
Channels(販路:価値提供チャネル)
Chennelsでは「価値をどのように顧客に届けるか?」、つまりどのような販売活動が必要か?を定義します。
サービス・商品の購買プロセスは、顧客が5つのフェーズを順番に辿ることで 価値を受け取っている(商品の購入・サービスを受ける)とされています。(いわゆるマーケティングファネルの考え方です。)
事業者である私たちは「顧客がフェーズを進めるプロセスを助ける役割」にあたる5つのチャネルタイプを検討しておくことが大切になる、という考え方のようです。
ここでのポイントは「モノ・サービスを”売る”」ための活動ではなく、お客様が「価値を得るために、必要なステップを支援する」という考え方ではないでしょうか。
5つのフェーズとチャネルタイプ
価値の提供(サービスの購入、継続利用)は、次の5つのフェーズ(ステップ)を踏むことで行われる、とされています。
- 認知
- 評価
- 購入
- 提供
- フォロー
また、検討しておきたい5つのチャネルタイプ()は次の通りです。
- セールス部隊(販売を行う実働部隊)
- ウェブ販売(ECサイトなど)
- 自社ショップ(実店舗)
- パートナーショップ(家電メーカーにとっての量販店)
- 卸売業者
当然ですが、5つあるチャネルタイプの全てを開拓・運用することが最良とは限りません。中には提供価値との親和性が低く、投資対効果が見合わないチャネルタイプもあるからです。
同じ書籍販売業でも、一般的な書店とAMAZONが力を入れているチャネルタイプが異なる点(書店では実販売・AMAZONはECサイト)をイメージ頂くと理解できるのかと思います。
Customer Relationships(顧客との関係性)
Customer Relationshipsの項目では、顧客がどのような関係維持・関係構築を望んでいるか?を定義します。
先にあげた販路(Channels)の項目と同じく、自社サービスにとって最適な方法を模索することが重要です。
具体的にいくつか例を挙げるなら、
- パーソナルアシスタンス
- セルフサービス
- 自動サービス
- コミュニティ
- 共創
といったものが挙げられます。
車がお好きな方であれば、ガソリンスタンドという同じ事業モデルであっても、店員が常駐している店舗と完全セルフ給油の店舗があるのはご存知でしょう。
この二つはCustomer Relationshipという考え方において差別化されている、と考えることができます。
Revenue Streams(収益の流れ)
Revenue Streamの項目では、顧客はどんな価値にお金を払うか?を可視化します。
最近では、いわゆるスポット型、ストック型のいずれの形で収益を上げるのか?と言った点も収益モデルの安定性に関わる要素と考えられる様になっています。
ストック収益となる課金体系は、
- 商品、サービスの販売
- 利用料、手数料
- 講読料
- レンタル、リース料
- ライセンス費用
といったものがあります。
ストック型の収入は、安定的に収益の積み上げが期待できるものの、スポット収益と比較するとその単価が小さくなる傾向があります。
ごく一般的なキャッシュフローの観点から見て、立ち上げ直後の企業が全ての収益をスポット収入で賄うのはリスクが伴う、ということも理解しておく必要があるかもしれません。
Key Resources(経営資源)
日本においては「ヒト・モノ・カネ」という言葉が有名ですが、「知的財産」や「ブランド力」といった要素も同様にKeyResources(=経営資源)として考えます。
より厳密に分類した考え方は、こちら(株式会社ロジカディア様のサイト)で綺麗にまとめられています。
コンテンツの著作権や蓄積されたデータ、と言った考え方もいわゆる経営資源に相当すると捉え、自社・他社の優位性を正しく把握することが大切です。
Key Activities(主要な活動)
KeyActivitiesの項目では、ビジネスモデルを駆動するために必要な活動について定義します。
一例として
- 製造
- プラットフォームの運用
- 問題解決
などを挙げることができます。
製造業やメーカーでは「製造」を。そしていわゆるSIerやコンサルティングファームは「問題解決」を行うことによってビジネスモデルを維持しています。
噛み砕いていうなら「本業は何か?」という視点であげられる事業活動がこれにあたるでしょう。
※参考までに当サイト:Seeds4Bizの”Key Activities”として「取材・記事の公開」などが挙げられます。
Key Partners(主要なパートナー)
KeyPartners項目では、強固な事業基盤を構築する上で、仕入れ先・外注先・販売代理店や戦略的アライアンスパートナーについて定義します。
少し特殊なパターンですが、たとえばジョイントベンチャーに挙げられる共同出資者などもKey Partners(主要なパートナー)に該当すると考えられます。
KeyPartnerを検討するポイントは、その動機が明確かどうか?という点にあります。
次のいずれかに該当するパートナーシップであるか?またその貢献度はどのくらいか?という判断基準を元に、より良いパートナーシップを構築するのに役立ちます。
- リソース及び稼働(主要活動)の獲得
- 教育・最適化コストの低減
- 不確実性とリスクの低減
Cost Structure(コスト構造)
Cost Structureの項目では、ビジネスモデルを維持するのに必要なコストを定義します。
キャッシュフローに関わる領域でもあり、先に挙げたRevenueStreamと合わせて、定期的に監視が必要な項目と言えるでしょう。
これはダイエットにおける消費カロリーと摂取カロリーの関係性とよく似た、簡単な足し算・引き算の関係で成り立ちます。当然、収益をコストより大きくすることで事業規模を拡大することができます。
ダイエットにおける失敗は「太りすぎ・痩せすぎ」に過ぎませんが、事業モデル運営の中での失敗の陰には”廃業”がチラつくことになります。
事業の拡大を目指すうえで積極的な投資・コストの投入は必要不可欠ですが、この点を忘れることなく組織の運営を行う必要があることには気を留めておくべきでしょう。
■【関連記事】”キャッシュフロー計算書”で「支払い能力」がわかる?経営者こそ理解すべき理由とは
まとめ
今回はビジネスモデルキャンバスを活用するメリットと、フレームワークを構成する9つの要素について解説しました。
BMCについて理解を深めたい方は「ビジネスモデル・ジェネレーション」を実際に読んでみる事をオススメします。
本の中ではGoogleやAppleのビジネスモデル分析、フリーミアムモデルをどのようにマネタイズ(収益化)するのか?など、様々なビジネスモデルをBMCの枠組みで考察されています。
今回の内容が「参考になった!」という方は、ぜひ他の関連記事から興味のある情報を探してみてください。
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