黒字倒産とは?|原因や事例から考える「利益は出てたのに!」を避ける方法

以前の記事 では、「経営者が損益計算書を理解すべき理由」について考えました。

最終的な利益である「当期純利益」や、事業そのものの損益を示す「営業利益」が黒字であれば、経営者としてはハッピー に思えますね。

・・・しかし、実はここに “落とし穴” があります。

黒字で経営がうまくいっているようでも、倒産してしまうケース(:黒字倒産)があるのをご存知でしょうか?

 

今回は、その“落とし穴”ともいえる「黒字倒産」についてわかりやすく解説します。

記事の前半では、黒字倒産の原因・起こってしまう理由について、そして後半では黒字倒産を回避する「3つの方法」についてお伝えしていきます。

  • 黒字倒産とは?その原因を理解できる
  • 黒字倒産を回避する3つの方法を知る

そもそも黒字倒産とは?「利益出てるから大丈夫」は危険!?

まず、黒字倒産はどういった状況の時に起こるのか?を考えておきます。

黒字倒産は「損益計算書上は利益が出ている(=黒字)ものの、手元の現金がないために支払ができず、経営が行き詰まった状況」の時に起こってしまいます。

つまり、資金繰りが上手くいっていない場合に起こる ということですね。

 

その反対に、損益計算書上も利益が出ていない会社が倒産することを「赤字倒産」と言います。

ここまでお伝えすると、「え?利益が出ているのに倒産するの?」と感じた方もいらっしゃるかも知れません。
しかし実は、2019年の東京商工リサーチの調査を見てみると、倒産した企業のおおよそ半数(全体の47.2%)ほどが黒字倒産となっています。

黒字倒産が “あり得ない話” ではないことがイメージ頂けたでしょうか。

 

「利益が出てる」のに黒字倒産が起こるのは何故か?

「利益が発生している」にも関わらず、なぜ「支払い能力がない(=手元に現金がなくなる)」状態が生まれてしまうのでしょうか?

これは、財務会計における

  • 「損益計算書」の”利益”
  • “現金”の動きを表す「キャッシュフロー」

との間にある差異に注目することで、その全体像を理解することができます。

・・・もう少し理解を深めて頂くためにも、簡単な事例で解説していきましょう。

 

【関連記事】キャッシュフロー計算書(C/S)で支払い能力がわかる!作成すべきメリットとは

財務会計」とは・・・外部のステークホルダー(利害関係者)に対して、過去の財政状態や経営状況を示すために行われるものをいいます。
一方、経営者が “経営状況の把握” や “意思決定” を目的に行われるものを「管理会計」といいます。

 

黒字倒産の原因を知ろう

ここでは「モノを仕入れて顧客に売る」という、一般的な小売業のケースを考えてみます。

学生時代から花や植物が好きだったあなたは、サラリーマンをやめて2020年12月1日に(株)シーズ園芸店というお店を開業しました。

そして経営者であるあなたは、現金100万円を資本金として営業をスタートします。

12月1日
借方貸方
現金100万円資本金100万円

12月15日。

お店で花を販売するため、仕入れ業者から掛けで200万円分の花を仕入れました。代金は1ヵ月後(1月15日)に支払う、という契約です。

12月15日
借方貸方
仕入200万円買掛金200万円

12月25日。

大口の業者からあなたへ「仕入れた花を、300万円ですべて1ヵ月後払い(1月25日) で買いたい」というオファーが届きました!あなたは「100万円の利益になる!」と考え、快く応諾します。

12月25日
借方貸方
売掛金300万円売上300万円

 

損益計算書上の「利益」は・・・

さて、この後 12月31日に シーズ園芸店は年度決算を行います。

まずは「損益計算書上の利益」について考えてみましょう。営業利益は以下の計算式で算出しますが、ここで店舗の家賃や人件費で構成される「販売費および一般管理費」は単純化のため無視します。

営業利益 = 売上 – 売上原価 – 販売費および一般管理費

営業利益は、[300万円 – 200万円 = 100万円] ですから、きちんと利益が出ている(=黒字)のは間違いありません。

さて、次にお店に “現金” はいくらあるのか?に目を向けてみましょう。

 

お店に残っている「現金」は・・・

手持ちのお金(現金)と売上・仕入れ代金をおさらいすると

  • 【資本金】:100万円
  • 【仕入れ】:200万円(1/15日に支払い)
  • 【売上げ】:300万円(1/25日に入金)

ということになりますね。

つまり1月15日時点で支払いに当てられるのは資本金の100万円しかなく、200万円分の支払い能力がない状態です。

この結果、資金繰りがうまくいかずに(株)シーズ園芸店は倒産してしまう(=黒字倒産)ことになります。

 

「損益計算書」の上では黒字が出ていても、現金の収支を示す「キャッシュフロー」はマイナス(=赤字)となるカラクリがイメージ頂けたでしょうか。

 

黒字倒産を回避するための方法3選

ここまでで「損益計算書上は黒字でも、倒産してしまう」可能性をご紹介しましたが、これを回避する方法はないのでしょうか?

ここからは、”黒字倒産を回避する方法” として次の3つをご紹介したいと思います。

  • 支払い期限の交渉
  • 銀行からの借入れ
  • 債権ファクタリング

 

支払い期限を交渉して、出金時期を延ばす

まず最初に、コストがかからない方法からご紹介しておきましょう。

それは、シンプルに支払い期限を交渉する(=入金の後に支払いがくるように調整する)という方法です。

「大口業者からの入金日(=翌月末)」が分かっているので、仕入業者への支払日を翌月末以降に調整してもらう、という考え方ですね。

仕入業者から言われた通りの期日に支払日を設定している経営者の方は、一度交渉をしてみることをオススメします。

場合によっては、これまで行っていた銀行借入などのコストを削減することができるかも知れません。

 

金融機関から借入れを行なって運転資金を増やす

次に、銀行借入によってキャッシュフローを黒字化させる方法です。

先ほどの シーズ園芸店 の事例を元に考えると、業者への支払い期限である1月15日までに銀行から100万円以上を調達することができれば、200万円の支払いは可能です。

仮に銀行への返済期限を1月末までと設定すれば、大口業者からの入金300万円を月末に見込むことができます。

この300万円を原資に銀行へ返済すれば、資金繰りは問題ありません。

 

また銀行借入は、赤字のケースであっても有効です。

たとえ損益計算書上の利益が赤字であっても、銀行からの借入に成功すれば、赤字の状態でも経営を維持できます。

銀行から200万円を調達し、返済期限を1年後など長期で設定することができれば、その間に売上を上げて会社の現金を積み上げることで返済原資をつくることができる、ということですね。

 

売掛金(債券)を現金に変える=ファクタリングサービスを利用する

ファクタリングとは、シンプルにお伝えすると「会社が保有する債権(上記の例では大口業者に対する売掛金)を現金で買い取ってくれる」というサービスです。

あまり馴染みがないかも知れませんが、実は銀行が従来から行っている業務の一つで、近年はベンチャー企業も多数参入している分野です。

 

仕組みをもう少し噛み砕いてお伝えしておきましょう。

たとえば「300万円の売掛金」を、270万円で銀行が現金で買い取る(ファクタリングサービスを利用する)とします。

すると、会社の現金は270万円増加する代わりに、1ヵ月後に予定されていた300万円の入金はなくなります(売上金の受取は銀行が行うため)。

これによって、現金を早めに手にすることができます。その代わりに、売掛金の何割かを手数料として銀行に支払うイメージですね。

こちらも先ほどのシーズ園芸店を例に考えると、1月15日までにファクタリングサービスを利用して現金を確保することができれば、仕入業者への支払いが滞ることを避けられます。

 

まとめ

今回は「黒字倒産」の起こる原因・そして回避するための考え方についてご紹介しました。

黒字倒産は、一般に “仕入れ” と “支払いの期日” に差異が発生することが原因となっています。

財務会計上の数値を把握し、理解するとともに、自社の売上や仕入れの構造を理解して最適なカタチに整備することも、経営者の役割なのかも知れませんね。

 

当サイトでは、創業〜新たな事業の展開に至るまで、”ビジネスのタネ” に繋がるような情報を幅広く発信しています。

今回の内容が「参考になった、興味をもてた」と言う方は、ぜひ他の関連記事からも興味のある情報(ビジネスの”タネ”)を探してみてください。

【関連記事】ファイナンス|Seeds4Biz