【徹底解説】”スコープマネジメント”で成功の条件をアップデートする

当サイトの「コンサルティング」カテゴリでは、ベーシックな「フレームワークの使い方」をはじめ、システム導入や業務改善で求められる「プロジェクト管理」の勘所などー。現場で役立つ実践的な情報を発信しています。

 

前回の記事(【徹底解説】”PMBOK”があればプロジェクト管理で悩まない?)では、プロジェクト管理における「知識体系:PMBOK」の基礎的な部分、いわば入門編とも言える内容をお伝えしました。

 

そこで今回からは【徹底解説シリーズ】と題し、 PMBOK知識エリアの各項目について詳しい解説 をお届けしていこうと思います。

第一回目となる今回は、プロジェクトマネジメントにおいて最も重要な要素のひとつとも言える「スコープマネジメント」について解説していきます。

興味のある方は ぜひ最後までご覧ください。

  • スコープマネジメントとは?その概要について理解できる
  • 現場で必要になる 実践的なポイントがわかる
  • デスマーチ案件を作らない考え方を知る。



スコープマネジメントなしに成功はない?

まず始めに、スコープマネジメントとは何でしょうか?

前回の記事でご紹介した、プロジェクト管理の「知識体系:PMBOK」ではスコープマネジメントが次のように定義されています。

「プロジェクトの目標である最終成果物を作成するために必要な作業が過不足なく確実に遂行されることを保証すること」

 

もう少し噛み砕いてお伝えするなら、“5W1Hにおける「What」(=何を?)をマネジメントする営み”と考えてみると理解が早まるかも知れません

PMBOKではさらに具体的なアクティビティとして、次のようなプロセスを定義しています。

  • 基本事項(PJ目標・概算見積りなど)の定義
  • 成果物、その遂行を目的としたタスクの定義
  • 成果物の検収
  • 成果物・タスクの見直し・最適化

 

現場レベルでのプロジェクトを経験された方の中には、

「スコープマネジメント」は、すなわち「何を?どこまで対応するか?を明確にすること」と理解されている方もいらっしゃるかもしれません。(いわゆる「PJの超上流工程における双方の合意」ですね。)

しかし、重ねてになりますが「何を?どこまで対応するか?を明確にすること」というのは、スコープマネジメントが持つ一部分の側面に過ぎません。

なぜならスコープマネジメントは、先に述べた通り「プロジェクト憲章作成」に始まり「定期的な見直しや最適化」さらには「検収フェーズ」に至る、全てのフェーズにおいて求められる営みだからです。

 

「正しいアプローチ」がプロジェクトにもたらすモノ

先にお伝えした通りスコープマネジメントは「何を?」を定義し、見直しや最新化といった「マネジメントサイクル」に乗せることで その品質を保証します。

スコープマネジメントの正しいアプローチには、「何をするか?」を明確にし、最新化することによってプロジェクトを推し進めるうえでの指針とすることができる、という価値(=バリュー)が含まれます。

 

なぜなら「何を?」が明確でない状態(=スコープマネジメントが適切でない)では、関係者全員が向かうべき方向性(=プロジェクト目標)を簡単に見失ってしまうことになるからです。(※いわゆる「糸の切れた凧(タコ)状態」ですね。)

向かうべき方向性を正しいアプローチでコントロールする(=スコープマネジメントを行う)ことで、「糸の切れた凧(タコ)になる」事態を避けることができるというものです。

 

「予期せぬ事態」に早く対応する「ガイドライン」?

そもそもプロジェクトでは、「ユーザ要求の変化」や内外部の様々な要因などによって「予期せぬ事態」に直面するのは避けられません。

実際、身近なところに目を向けてみても、昨年(2019年)の時点で「2020年にパンデミックが世界的に流行し、東京オリンピックが延期される」ということを予想できていた人はいなかったことでしょう。

・・・少し話がそれましたが、要するに世間の流れが変化し続けている中で目的(=そもそも何をするか?)が曖昧であったり、ゴールを最新化しない(当初に定義したスコープだけに執着してしまう)のは「状況への適応」を放棄していることと同義ではないか、と言うことです。

スコープマネジメントはこのような「予期せぬ事態」にいち早く対応し、結果を最大化するための「ガイドライン」と言えるのではないでしょうか。

 

調査結果から見る「成功」の難しさ

ITプロジェクトの「成功率」を具体的な数値で見てみると「2003年では26.7%、2008年に31.1%、2018年は52.8%」と著しく低いものとなっています。

17年前の26.7%からは大幅に改善したとはいえ、2年前の最新データにおいても「成功に至ったケース」は半数程度ということです。

・・・いかがでしょうか。 みなさまの感覚とも一致しているでしょうかー?。

成功に至らない「原因」は、プロジェクトによって様々でしょう。しかし「察し・忖度」の文化を持つ日本において、理解・認識が曖昧なままプロジェクトを進めてしまうこと(=適切でないスコープマネジメント)が一因となっているケースは少なくないのかも知れません。

 

■(執筆中)【関連記事】「空気を読む・忖度する・察する」のは”合理的”ではない

 


スコープマネジメントのポイント3つ

ここまでで「スコープ管理とは?」「スコープ管理はナゼ必要?」「日本におけるプロジェクトの成功率」といった点についてお伝えしてきました。

では、実際の現場レベルではどのようなアプローチが必要なのでしょうか?当記事のメインコンテンツでもある「3つのポイント」を参考に、行動レベルに落とし込んで頂ければ嬉しく思います。

 

定義する

最初のポイントは”期待値と成果を定義する“というものです。

いわゆるプロジェクトの最上流・超上流工程では「プロジェクト開始前に期待しているもの」と「プロジェクト実施後に得るもの」を一致させることでスコープを定義します。

 

・・・はい。言うのは簡単ですが、現実問題としてこの双方を一致させるのは容易なことではありません。

なぜなら「期待」はさまざまな要因(社会や業界の動向や社内人事など)がもとで変化したり、知識・認識が不十分なためにベンダーに正確に伝えられていない場合があるからです。

逆に「得られるもの」も、プロジェクトがスタートしてから当初の想定通りに実現・提供できないことが判明することもあるでしょう。(調達先ベンダーの倒産、あらたに発生した法的・技術的な制約など)

 

超上流の工程における「期待値の定義・コントロール」に興味がある方は、”ビジネスアナリシス”という考え方が参考になるかも知れません。

■(執筆中)【関連記事】経営課題とITを繋ぐ”ビジネスアナリシス”

 

合意を得る

次に、”関係者全員の合意を得る“という点について考えてみましょう。

“現場部門向けのシンプルなシステム導入プロジェクト”ひとつとってみても、多様な関係者(=ステークホルダー)が存在しています。

 

実際の現場に目を向けてみると、発注者側なら「実際に利用する現場部門」や「導入を支援する情報システム部門」、さらには「経営層」などが主要なステークホルダーとして挙げられます。さらに受注者側においても「セールス部隊」や「デリバリー部隊」、その後ろには「外部ベンダー」を抱えるケースもありますし、プロジェクトの規模によっては「経営層」が関わることもあるでしょうか。

 

理想はここで挙げたような「関係者”全員の合意”を得ること」です。

なぜならクライアントの「情報システム部門」とベンダーの「営業部隊」の合意だけで話が進んでしまい、「実際に利用する現場部門」が蚊帳の外であったりするケースが実は少なくないからです。

この状態は社内に不要なハレーションを起こしかねず、場合によっては現場部門からの協力が得られないまま導入プロジェクトが進んでしまうことになります。当然ですが、導入部門の協力なしに「現場に即したシステム導入」を推し進めることはできません。

プロジェクトを成功に導くためにも「合意を得る」というプロセスは避けては通れないのです。

 

最新化する

3つ目は、”期待値と成果を最新化する“です。

真のスコープマネジメントの難しさはこの「常に最新化し続ける」と言う点にあるのではないでしょうか。

なぜなら、”定義する”のセクションでもお伝えしたように”期待値”と”成果”は常に変化するものだからです。

 

「定義・合意・最新化」を繋ぐカギは”可視化”

期待値の「定義・合意・最新化」をステークホルダー全員の共通認識にする重要なキーワードは「可視化=見える化」です。

なぜでしょうかー?

重ねてになりますが、「現状」を「期待値」に近づけるには、その間にある「ギャップ」を正しく理解する必要があります。そしてさらにその「ギャップ」を理解するためには「現状」を正確に把握している必要があります。

例)太った人が「痩せたい」と考えた場合、「期待値(=目標体重)」と「現状=(今の体重)」の把握から始まると思います。

 

さらに”合意する”のセクションでお伝えしたように、特定のメンバーだけが理解している状況は、あまり良い状態とは言えません。つまり「ステークホルダー全員が現状を把握し、共通認識とする」必要があります。

そのためにも「可視化」することで、全員が理解する(少なくとも状況を知っている)状態を作ることが求められます。

 

このあたりのアプローチ方法(可視化とギャップ分析)については「問題解決スキル」の記事でも詳しく解説しています。

■【関連記事】優秀なひとの共通点は”問題解決”にあった?

 

可視化のためのアイディア

ここではシステム開発について例を挙げますが、「実装機能一覧」をリスト化することで可視化を実現する助けとなります。

「一覧化された機能」と「重要度」を併せて管理することで、事前に検討された優先順位をもとに「必須機能のみをリリースする」という(受発注者で合意した)マイルストーンを置き、プロジェクトをいくつかのフェーズで区切ることもできるでしょう。

(Phase.1では優先度:高および付随機能を実現、Phase.2では優先度:中を実現。など)。

 

発注者・プロジェクト推進者ともに「やってくれる”だろう”」「言わなくてもわかる”だろう”」というのは、プロジェクトを進める上では「危険な考え方」とも言えます。

小さなことでプロジェクトが躓かないためにも、たとえ”業界常識”といえるような前提条件でさえ、事前にしっかりと伝えておくことが大切なのかも知れませんね。

 

まとめ

今回は、PMBOKの知識エリアのひとつである「スコープマネジメント」を通して、プロジェクトを成功に近づける3つのポイント+αについてお伝えしました。

 

これからもSeeds4bizでは 「実務レベルで参考になる情報(=実践的な情報)」を発信していきたいと思っています。

この記事が参考になった方は、プロジェクト管理についての関連記事も参考にしてみてください。

■【徹底解説】”PMBOK”があればプロジェクト管理で悩まない?